ニューヨークで学んだ、ファンづくりのヒント
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2023.6.20
こんにちは、シュシュこと松田です。
5月3日〜5日にトロントで開催されたAwwwardsカンファレンスの前に、
有志のメンバーでニューヨークへ行き、ニューヨークの文化の中で、
デジタル技術がどのように使用されているかなど、最新の技術トレンドに触れてきました。
その際に訪問した場所を、動画や写真とともにレポートでお送りします。
○METROGRAPH
昔、カルチャーの中心地として発展していたローワーイーストサイドで、 ファッションデザイナーの創設者が、自身の好きな「映画とデザイン」を組み合わせた場所を作りたいとオープンした映画館です。 クラシック映画を再評価し、古い映画をよく上映しています。他の映画館とは全く異なるニッチな映画館として、ポジションを確立しています。
映画鑑賞以外にもカフェやバーといったスペースがあり、映画前後の時間もMETROGRAPHで楽しむことができます。
飽和状態のエンタメコンテンツが消費者の時間を奪い、お家で映画鑑賞をすることが一般化された今、
あえてリアルな空間でファンとのリアルなつながりを強める場所を提供することで、コミュニティ形成の一環を担っているように感じました。
↓入り口にはキオスクのような空間が広がっていて、フラっと立ち寄れる空間でした!
○NIKE House of innovation
デジタルと小売を融合した最先端の購買体験を試みる、大手グローバル企業NIKEの実験的ショップです。
NIKEの、「最もパーソナルかつ、レスポンシブなスポーツ体験」をコンセプトとしたフラッグシップショップとなっており、
フットウェアのフルカスタマイズや、アプリを使用したレジを通さない購入体験など、デジタルと小売が融合した購買体験を提供しています。
店舗でアプリを使用し購入したい商品のバーコードをスキャンして購入することができます。(もちろんレジで普通に現金で買うこともできます!)
それゆえ店員さんが少なく、NIKEがいかにDXを重視しているかが分かる店舗でした。
↓大きなデジタルサイネージが店舗装飾の一つとして大きなの存在感を放っていました。
○Glossier
D2Cのパイオニアとして知られるGlossierが、リアル店舗でどのような購買体験を提供しているのか視察してきました。
常に店員が複数人おり、その場でiPadでECサイトから購入するという、購買体験でした(まるでAppleのよう…)。
特に特徴的なのは、その購入後のフローです。
①購入→②購入した商品の袋詰めをエントランスで待つ→③パッキングが完了したらカウンターで名前を呼ばれる→④受け取る
まるでカフェでのテイクアウトするかのようなフローは、待ち時間さえもスペシャルに感じられました。
さらにはパッキングされた袋の中にはシールが同梱されたり、店内に写真ブースがあったりと、ユーザーがInstagramで拡散したくなる仕掛けもたくさん。
購買フローの他にも、ファンにはたまらない世界観が展開されています。
曲線を多用した什器や、ギャラリーのような店舗空間、ピンクのつなぎのスタッフユニフォームなど、好きな人にとってはときめきが止まらないです!
こだわり抜いた一貫した世界観の構築は、ファンの期待感や愛着を高めることを、改めて体感する視察でした。
↓ここでもデジタルサイネージが。壁面に飾られた人の顔の写真は、アート展示のようでした。
○Printed mater本店
日本でも活気のあるZINEですが、ここ、Printed materはZINE文化の総本山と言われています。
アートブック普及のためのNPO団体が運営するZINEやアートブック販売の店で、購入金がアーティストの支援につながる仕組みです。
アートと文化の重要な拠点であり、本の固定概念にとらわれない製本や印刷加工の本があまた並べられています。
様々な印刷物やメジャー・マイナー問わずアーティストによるアートブックが多数販売されていた。
特に、LGBTQ問題や宗教、人種問題など、社会性の強いメッセージを感じる作品が多く、文化や現代アートの発信地となり、
通常の本屋と全く違う役割を持っているのを感じました。
また、ギャラリーに併設された別店舗もあり、よりアートに密着した本屋として展開されていた。
Printed materのような大型のアートブック専門店が成り立っている背景には、
ビジュアルよりもメッセージ性の強い創作物に対して、価値を感じてお金を払う文化が土壌にあると感じました。
○MAGENTAVERSE NYC (ARTECH HOUSE)
チェルシーにあるVR以上の没入感をもたらす最先端のメディアアートギャラリーです。
空間音楽とともに3DCGが四方八方の壁と床に映し出され、デジタル空間に自分が入り込んだかのような、VRやメタバースのさらに先の体験コンテンツのような印象でした。
PANTONEが発表した、2023年の流行色”Viva Magenta”からMAGENTA VERSEというテーマで3DCG空間が展開されていました。
他コーナーではカメラを使用した縦型ディスプレイのインタラクティブコンテンツが複数あり、
MAGENTA VERSEという一つの色のテーマから、様々な体験コンテンツへ昇華しておりアート性の高さも印象的でした。
○monopo NY
SNSにて、「The Parlor」という場を作ったという記事を見かけて、monopo NYの小迫さんにお会いしてきました。
「The Parlor」とは、monopoやTakram、BLANKといった日系企業がクリエイティブコミュニティの場として2022年に設立された場所です。
ブルックリンに位置するParlorはとても素敵なオフィスで、
海外展開のきっかけやNY市場の特徴といった、海外展開にまつわる話から、
同業の会社として、仕事のスタイルや社会でのポジショニングの話まで、たくさんお話しすることができました。
普段、同業他社さんとお話しをする機会がなかなかない中、客観的な視点や切り口で弊社への視点をいただけたのは、とても貴重で充実した時間となりました。
改めて、お時間を割いていただいた小迫さん、本当にありがとうございました!
○総括
ニューヨークは、古い街並みと最先端のデジタルが共存していました。
多くの人を惹きつけるニューヨークには、以上のように「ファンづくり」のヒントもたくさんありました。
今回視察したところは、大小さまざまですが、すべて根強いファンを獲得し強固なコミュニティを形成しています。
コミュニティ形成のためには個のブランド力を高めることが必要です。
他の店とは違う、そこでしかできない体験をいかにして提供するかが、ファン獲得の要になり、
その法則は国が変わっても普遍のものであると、ひしひしと身をもって学ぶことができました。
今回得た視点を、これからに活かし、ファンづくりの種を蒔いていこうと思います。