境界を越えて、デザインの意味を考え続ける|デザイナー・王 藤インタビュー
2026.2.26
2025年、デザイナーとして新卒入社した王藤。
中国でインタラクションデザインを学んだ後、日本に渡り多摩美術大学大学院でグラフィックデザインを専攻。その後、日本での就職を選び、現在はWebを中心に幅広いプロジェクトに携わっている。
静かで落ち着いた語り口の奥にあるのは、「デザインは社会や生活とどう関わるのか」という問いを長い時間かけて考え続けてきた姿勢だ。
国を越えて環境を変えた理由。言葉や文化の違いの中で感じた葛藤。そして、仕事を通して少しずつ見えてきた自分の役割。
王藤がどのようにして今の仕事観にたどり着いたのかを聞いた。
「生活を変えるもの」としてのデザイン
— まずは、現在のお仕事について教えてください。
王:セルインタラクティブで、デジタルデザインを中心に担当しています。Webサイトのデザインを軸にしながら、プロジェクトによっては印刷物やビジュアル制作にも関わっています。まだ学ぶことは多いですが、少しずつ担当できる範囲が広がってきている実感があります。
— もともとインタラクションデザインを専攻されていたんですよね。
王:はい。中国の美術大学で学んでいました。ちょうど2015年前後で、中国ではインターネットやスマートフォンの普及が一気に進んだ時期でした。生活の中で当たり前に使うサービスがどんどん変わっていくのを見ていて、デザインが人の行動や生活に直接影響していることを強く感じたんです。
— 社会の変化を近くで見ていたんですね。
王:そうですね。単に見た目を作るというより、「どうすれば人が使いやすくなるか」「どうすれば自然に行動が変わるか」という部分に興味を持つようになりました。それが、デザインを仕事にしたいと思ったきっかけだったと思います。
本と図鑑に囲まれていた子ども時代
— 子どもの頃はどんな性格でしたか?
王:外で遊ぶよりは、家の中で過ごすことが多かったですね。本を読んだり、図鑑を見たりするのが好きでした。家に本が多かったので、自然とそういう時間が増えていったんだと思います。
— 今の仕事にもつながっていそうですね。
王:そうかもしれません。特にビジュアルの多い本が好きで、言葉が分からなくても、写真や図版からいろいろ想像していました。今思うと、その頃から「見ること」で世界を理解しようとしていたのかもしれません。
— 当時から海外への興味もあったとか。
王:はい。はっきりした理由があったわけではないのですが、いつか海外で生活してみたいという気持ちはありました。自分が知らない場所で生活すると、どんな感じなんだろうと、ずっと考えていた気がします。

一枚のポスターがつくった、日本のデザインへの憧れ
— 日本に興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか。
王:幼い頃に見た、東京オリンピックのポスターです。強く印象に残っていて、日本のデザインに興味を持つきっかけになりました。
— ビジュアルとしての強さに惹かれた。
王:はい。とてもシンプルなのに、強い印象があって。余白の使い方や文字の存在感が、それまで見てきたものと少し違うと感じました。その頃から、日本のデザインをもっと知りたいと思うようになりました。
— その後、日本の文化に触れていったんですね。
王:大学時代に日本の雑誌や音楽に触れる機会があって。POPEYEやCity Popなどを知って、日本の文化全体に興味を持つようになりました。実際に日本を訪れたときに、「ここで学びたい」という気持ちがはっきりしました。
もう一度、基礎から学び直すという選択
— 中国ではインタラクションデザインを学んでいた中で、なぜ日本ではグラフィックデザインを選んだのでしょうか。
王:インタラクションデザインを学ぶ中で、逆に基礎的な部分の重要性を感じるようになったんです。タイポグラフィやレイアウトなど、もっと根本的な表現を深く理解したいと思いました。
— 一度立ち止まって、土台を作り直すような感覚ですね。
王:そうですね。効率だけを考えれば、そのまま就職する道もあったと思います。でも、自分の中ではまだ足りないものがあるという感覚があって。長い目で見たときに、もう一度しっかり学び直したいと思いました。
— 日本に来る決断は大きかったのではないですか。
王:とても大きかったです。家族や友人からも心配されましたし、自分自身も不安はありました。それまで積み重ねてきた経験が、日本では通用しないかもしれないという怖さもありました。
— 言語も文化も違いますよね。
王:はい。日本語の勉強もそうですし、大学院の受験や就職活動もすべてが初めての経験でした。自分を一から作り直しているような感覚でした。
— 振り返ってみて、その経験はどんな意味を持っていますか。
王:長期的に物事を考えるようになったと思います。すぐに結果が出なくても続けることや、周囲の意見に流されすぎず、自分の判断を信じることの大切さを学びました。この経験は、今の仕事の考え方にもつながっていると思います。
初めて現場に立った経験
— 入社後、成長を実感した案件はありますか?
王:あるメーカーの新卒採用プロジェクトです。Webサイトから印刷物まで関わる、大きな案件でした。Webデザインに本格的に取り組んだのも、このプロジェクトが初めてでした。
— 印象に残っている出来事はありますか。
王:工場での撮影です。それまでデザイン作業はPCの前で完結することが多かったのですが、現場ではその場で判断することや、人とのコミュニケーションがとても重要でした。言葉遣いや立ち振る舞いも含めて、最初は戸惑うことが多かったです。
— デザイン以外の難しさですね。
王:はい。でもその経験を通して、デザインは一人で作るものではないと実感しました。現場の空気や、人との関係性が最終的なアウトプットにも影響する。視覚表現だけではなく、人との関わり方もデザイナーにとって大切な要素なんだと学びました。
「FUN」を一緒に考えられる関係性
— CELLらしいと感じた案件はありますか?
王:プラグマさんのグリーティングカード制作です。1年間継続して担当しているのですが、デザインに対してとても信頼していただいていると感じました。
— どんな点が印象的でしたか。
王:カードを車窓のように見せるカットや、特殊な印刷加工など、自由な発想を取り入れられたことです。発注側と受注側という関係というより、同じチームとして「どうすればもっとFUNになるか」を一緒に考えている感覚がありました。
— 信頼があるからこそ、挑戦できる。
王:そうですね。表現に対して前向きに向き合える環境だと思います。完成したものを見るだけでなく、作っている過程そのものが楽しいと感じられた案件でした。

少しずつ、自分の立ち位置が見えてきた
— 入社してから現在までを振り返って、今はどんなフェーズにいると思いますか。
王:入社当初は、自分の強みをどう活かせばいいのか分からない状態でした。文化も考え方も違う中で、自分の意見を出していいのか迷うことも多かったです。
— 今は変化を感じますか?
王:少しずつですが、自分の視点を活かせる場面が増えてきたと思います。異なる文化の中で生活してきた経験があるからこそ、別の角度から意見を出せることもありますし、それを受け入れてもらえる環境があると感じています。
— 周囲との関係性も変わってきましたか。
王:はい。まだ学ぶことは多いですが、以前より主体的に関われるようになってきました。

プライベートでは、大阪のアートブックフェアにも出展。
デザインの先にある「FAN」をつくる
— これから挑戦していきたいことを教えてください。
王:CELLにとって「FUN」と「FAN」はどちらも大切な言葉だと思っています。これまではデザインを作る側として関わることが中心でしたが、これからはコミュニケーションを通して、人とのつながりを深める部分にも関わっていきたいです。
— デザイナーとしての役割を広げていく、ということですね。
王:そうですね。将来的には裏方にとどまらず、少しずつ前に立つ役割にも挑戦していきたいと思っています。デザインは完成物だけでなく、人と人の関係の中で価値が生まれるものだと思うので、その部分にも貢献できるようになりたいです。
— 最後に、中途で入社を考えている方にメッセージをお願いします。
王:これまで自分自身も環境を変えながら学び続けてきましたが、セルインタラクティブは、それぞれの経験や視点を持ち寄りながら、チームとして価値をつくっていく会社だと感じています。自分の専門性を大切にしながらも、周囲から刺激を受けたり、新しい領域に挑戦したりすることを楽しめる方には、とても合う環境だと思います。
Webだけに限らず、さまざまな領域を横断しながらクリエイティブに関われるので、学び続けることや変化そのものを前向きに捉えられる方と、一緒に成長していけたら嬉しいです。

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