伝えるためにもう一度選び直したキャリア|デザイナー・大坪愛実インタビュー
Member interview
2026.2.20
多摩美術大学で舞台美術を学び、テレビ局で美術進行を経験。その後、デザイン専門学校を経て、未経験からWebデザイナーへと転身した。
一見すると柔らかく、穏やかな印象。しかし話を聞いていくと、その奥には「表現は、ちゃんと伝わってこそ意味がある」という強い芯がある。
演劇を学ぶ中で生まれた気づき。
テレビの現場で広がった視野。
そして、もう一度表現を学び直すという選択。
遠回りにも見えるキャリアのなかで、大坪が一貫して探していたものとは何だったのか。
そして今、セルインタラクティブでどんな景色を見ているのかを聞いた。
「何を伝えたかったの?」と聞かれた
— まずはこれまでの経歴から教えてください。
大坪:多摩美術大学の演劇舞踊デザイン学科で、劇場美術デザインを専攻していました。いわゆる舞台美術や衣装、映像美術などを学ぶコースです。
卒業後は、キー局の美術進行として働いていました。スタジオセットの段取りやスケジュール管理、撮影現場の立ち会いなどを担当していて。その後、「やっぱりデザインがやりたい」と思い直して、東京デザインプレックス研究所に通い、卒業後にセルインタラクティブへ入社しました。
— 一度社会に出てから、学び直して転職。大きな決断ですよね。
大坪:そうですね。振り返ると、わりと覚悟はしていたと思います。
— そもそも、デザインを志したきっかけは何だったんでしょう?
大坪:「これ」という一つの大きなきっかけがあったというより、いろいろな要素が少しずつ積み重なって、デザインにたどり着いたように感じています。
でも、強く意識した出来事はあります。
— どんな出来事ですか?
大坪:大学の公演で衣装制作を担当したときのことです。友人や家族に観劇してもらって感想を聞いたら、「衣装や美術はすごかったけど、結局何を伝えたいのか分からなかった」と言われたんです。
— それは…刺さりますね。
大坪:はい(笑)。すごく印象に残っています。
「やっぱり衣装やセットがすごいね!」とは言ってもらえたんですが、 一方で、「この劇は、何を伝えたかったの?」と聞かれたときに、うまく答えられなくて。 友人や家族が、作品に対して少し困惑しているように感じたんです。素直な感動というより、「?」が浮かんでいるような反応というか……。
ちゃんと届いていなかったんだな、って。それがずっとどこかに残っていました。
ちょうどその頃、同じキャンパスのデザイン系の卒業制作を見る機会があって。
そこでは、身近な社会課題をテーマにして、それに対する提案を形にしていたんです。 作品を通して、作り手と鑑賞者のあいだにちゃんとコミュニケーションが生まれていた。
それを見たときに、 「あ、私はこういう表現をやってみたいのかもしれない」と思いました。
— アートではなく、デザインを。
大坪:そうです。
自己表現だけで完結するのではなく、誰かに届くことを前提に設計された表現。それがすごく魅力的に見えました。

表現は好き。でも、自分がなれるとは思っていなかった
— もともと、ものづくりは身近な存在だったんですか?
大坪:はい。音楽やダンス、ミュージカル、お笑いなど、エンタメ全般が大好きでした。両親もそういうものをよく観る人だったので、自然と触れていました。
3歳から15歳まではエレクトーンを習っていて、友人とアンサンブルを組んで大会に出たりもしていました。高校ではバンドを組み、大学ではよさこいチームに入って。
振り返ると、ずっと「誰かと一緒に表現する」ことが好きだったんだと思います。
— かなりアクティブですね。
大坪:でも、わりと現実的な子どもでもあったんです。
将来の夢は「〇〇になりたい!」というより、「名前のある大学を出て、お金に困らない生活をしたい」みたいな(笑)。
デザイナーは、特別な才能がある人がなるものだと思っていました。自分がその道に進むなんて、当時は想像していなかったです。
— その価値観が変わったのはいつ頃ですか?
大坪:高校時代が大きかったと思います。
「自由を履き違えない」高校で学んだこと
— どんな高校だったんですか?
大坪:校則がほぼない学校でした。私服OK、髪色もピアスも自由。バイトも部活の掛け持ちもOK。
ただし、「自由を履き違えない」「自律自制を大切にする」という考え方が徹底されていました。
— かなり自立が求められますね。
大坪:そうですね。周りには、やりたいことがはっきりしている子も多かったです。
その環境にいるうちに、「自分は何を勉強したいんだろう」と本気で考えるようになりました。
その結果、いわゆる一般的な大学ではなく、演劇や舞台芸術を学びたいと思い、美大を目指しました。
— 安定志向から一歩踏み出した。
大坪:そうですね。あの高校にいなかったら、美大には進んでいなかったかもしれません。

テレビ業界で見た「完成された世界」
— 美大卒業後、テレビ局に就職されていますよね。
大坪:はい。美術進行として働いていました。
美術チームの段取りやスケジュール管理、撮影現場での立ち会いなどを担当していました。
— 現場はどんな雰囲気でしたか?
大坪:プロの演者さんや、大道具さんが組み立ててくれるセット。隔週ペースで撮影があり、ある意味ルーティンワーク的な側面もありました。
もちろん、大変なロケや変則的なスケジュールもありましたが、基本的には完成された世界の中で、決められた役割を全うするという感覚でした。
— そこで、どんな違和感が生まれたんでしょう。
大坪:段々と、「やっぱり自分の手でものづくりをしたいのかも?」と感じるようになりました。
美術進行は、誰かの決定を実行に移すポジション。もちろん責任もありますが、自分がゼロから考える機会は多くありませんでした。
それが少しずつ、物足りなくなっていって。
— そこで学び直す決断を。
大坪:はい。1年間、WebやDTPを学ぶ専門学校に通いました。
不安もありました。けれど、「学び直すならきっと若いうちの方が良い」という気持ちのほうが大きかったです。
「この人たちと働きたい」と思えた
— セルインタラクティブを選んだ理由は?
大坪:事業内容ももちろんですが、「人」と「場所」が大きかったです。
私は生まれは九州ですが、横浜で育ちました。慣れ親しんだ街で働きたいという気持ちがあって。
— 横浜拠点というのも決め手に。
大坪:はい。あと、OB訪問や面接を重ねる中で、社内の風通しの良さや、ラフでフラットなコミュニケーションを感じました。
「この人たちと働きたい」と素直に思えたんです。
— 最終的に人が決め手だった。
大坪:そうですね。未経験の第二新卒という立場で不安もありましたが、「ここなら挑戦させてもらえるかも」と思いました。
異色の経歴は、武器になっている?
— 前職がテレビ業界というのは、社内でも少し異色ですよね。
大坪:自分でも変わってるなと思います。
— 経験が活きていると感じる瞬間はありますか?
大坪:正直に言うと、そのまま活きている場面はそこまで多くはありません。
ただ、撮影の進め方や現場の基本的な用語を知っていたことは、多少のアドバンテージだったと思います。
— 今はディレクション側に立つこともありますよね。
大坪:そうなんです。以前は指示を受ける側でしたが、今はディレクション側として現場に立つこともある。
それが不思議でもあり、面白いです。
— 正直、あの現場を経験してよかったなと思うことってありますか?
大坪:やっぱり、大きなチームで働くことや、高いクオリティを求められる現場で働けたことは、本当に良い経験になりました。 自分が携わったものが誰かの目に留まることが、自分にとってのやりがいになると気づけたことも、大きかったと思います。
それと、過酷なロケや変則的なスケジュールに対しても、少し耐性はついたのかなと思います。 「ちょっと大変だな」と思うときでも、「あのときいけたから、今回も大丈夫!」と思えることがあって、そうやって踏ん張れる場面は増えた気がします。

演劇と再会した、新しいオフィス
— 最近印象に残っている出来事はありますか?
大坪:移転した新オフィスですね。
同じ建物に「Dance Base Yokohama(DaBY)」が入っていて、ダンススペースも共有しています。
— かなり珍しい環境ですよね。
大坪:そうですね。セルグループが入っている北仲ブリック&ホワイト自体が、地域に開かれた場所ということもあって、いろんな人やカルチャーと自然に接点が生まれる環境だと思います。
働いていても、普通のオフィスとは少し違う感覚があります。
— 大坪さんはもともと演劇を学ばれていましたよね。
大坪:そうなんです。自分が作り手になる道を選ばなかっただけで、演劇は今でも大好きです。だから、身体表現のパフォーマーの方たちと同じ空間にいられるのが、すごく嬉しくて。 思いがけない形で、演劇と再会できたような感覚があります。
第一線で活躍する先輩たちを目指したい
— 入社して1年。今、自分はどんな位置にいると感じますか?
大坪:感覚としては、まだ駆け出しのデザイナーです。
でも、「未経験だから」と線を引かずに、紙・Web・動画など、いろいろな案件を任せてもらっています。撮影にも連れて行ってもらえて、本当に多くの経験をさせてもらっています。
だからこそ、いつまでも駆け出しではいけない、という気持ちも強いです。
— 焦りもある?
大坪:あります。
若いうちから第一線で活躍している先輩たちに囲まれているので、「早く成長しなきゃ」と思います。
ただ、焦りすぎても良くないと思っていて。まずは一つひとつの案件でできることを増やしていって、どんな案件でも安定して対応できるようになりたいです。

エンタメに、もう一度向き合う
— これからの目標は?
大坪:いろんなツールで戦える人材になりたいです。
スキルを増やせば、お客さんに提供できる価値も広がると思っています。
映像・Web・紙。領域を横断できるクリエイターになりたい。
— 具体的に取り組んでいる案件はありますか?
大坪:現在は、「Start Your FUJIROCK!」という、フジロックを安心して楽しむためのライト層向けフェスガイドLPの企画を、前任から引き継ぎ、担当しています。
サイト制作だけでなく、実際に3日間フジロックに参加して、お客さんにインタビューをしたり。
Webだけに閉じず、企画段階から考え、自分たちの足で調査しています。
— まさにエンタメですね。
大坪:はい。
ずっと好きだったエンタメに、今度は伝える側として関われるのが本当に嬉しいです。


3日間撮影でFUJI ROCK FESTIVALに参加した。
遠回りになったけれど、これで良かったかも
— 最後に、中途で挑戦を考えている人へメッセージをお願いします。
大坪:私は、美大を出てテレビ業界に入り、その後もう一度学び直してデザイナーになりました。少し変わった、遠回りな経歴だと思います。
でも振り返ると、どのタイミングでも「やっぱりこっちだな」と思った方を選んできました。 その積み重ねが今につながっています。
セルインタラクティブは、領域を横断しながら挑戦できる環境です。 まだ自信がなくても、実践の中で経験を積ませてもらえる。
これからも試行錯誤しながら、 ちゃんと伝わる表現をつくれるデザイナーになっていきたいです。

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